人でも、鬼でも、「君を愛す」
確かに……三メートルだった距離がゼロセンチになっていた。

「あ……あ、そうだよね!ごめん!」

ゼロセンチという近距離だったことに今更ながら照れて、後ずさりした。

気まずい空気を打ち破るように、春明がパンッパンッと手を叩いた。

「入学式、遅れるよ?」


家からの最寄り駅に若干急ぎ足で向かいながら、春明が天鬼について話してくれた。

「天鬼とは、じいちゃんが結構前に知り合っててね」

春明のおじいさんは強力な霊能者で、こことは離れた田舎に住んでいる。

「いろいろあって、俺が使役することになったんだけど」

「いろいろって??」

天鬼は、弱みを握られて……って言ってたけど。

「んー、内緒」

チラッと天鬼と春明が目を合わせた。

……なんか、二人だけの秘密なのかな。

「天鬼は事実上西野家の養子ってことになって。勉強もできたから、じいちゃんが高校の理事長と知り合いだし、特例で入試を受けさせてもらって合格したんだ」

「へぇー、勉強できるんだ」

「じいさんに色々教えられたんだよ」

天鬼はぶっきらぼうに答えた。

「あ、名前なんだけど、僕たちだけのときは天鬼でいいけど、人前では西野……」
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