人でも、鬼でも、「君を愛す」
「天(そら)」

春明の言葉に重ねるようにして、天鬼が言った。

「ん?空??」

私は、上空を見上げる。

「違う。俺の人のときの名前だ。天でそらって読む」

「天……」

天鬼だから、空って漢字を使わないで、天でそら読みにしたのかな?

「いい名前だね、天」

「……ふん。人前で天鬼と間違えるんじゃねぇぞ」

なぜか天は、そっぽを向いて言った。

それを見て春明が微笑んでいる。

「間違えないよ……多分」

「お前、どんくさそうだからな」

「なっ……どんくさくなんかないし!」

私が反論すると、春明が笑いながら言う。

「いや、紗子は焦ったときに絶対言い間違えるよ」

「う……」

幼馴染の言う絶対には強い説得力があった。


駅に着き、改札を通るとホームで電車が来るのを待つ。

この時間帯は通学・通勤のラッシュでものすごく混んでいた。

「電車乗れるかなぁ……」

普段この時間に電車に乗らないから、混み具合がよく分からなくて不安になった。

「乗らないと遅刻だからね、意地でも乗るよ」

「小せぇからお前は大丈夫だろ」

天の大きな手が私の頭を押した。

「……そういう問題じゃないし、縮みそうだから押さないで」
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