人でも、鬼でも、「君を愛す」
私には、生れつき特殊な血が流れている。

その血のおかげで、明日は高校の入学式だというのに、真夜中午前二時、国道沿いの歩道に来ていた。

私以外の人も、走っている車も見当たらない。

『貴様……何者だ!!』

片腕を失い、頭から流血した痕のある男が叫ぶ。

その男は明らかに生者ではない。

全身から青白い光を放つ幽霊……いや、魔の力を受け悪霊化した「幽魔」と呼ばれるもの。

歩道の角に置かれた花束が目に入る。

……この幽魔は、この国道で事故死したのだ。

「私は……退魔の力を受け継ぐ者」

『退魔の……力……!?』

驚く幽魔に向けて、手をかざす。

「魔の力を除き、元に戻らんことを」

私が言葉を唱えると、幽魔の体が光に包まれる。

夜中の暗闇を金色の光が明るくし、消えた。

幽魔の姿も消え、風もないのに花束が揺れた。

薄くぼんやりとした姿の、幽魔だった男が花束に触れている。

青白い光はなくなり、無害な幽霊に戻っていた。

「お、終わった……」

これでようやく、家に帰り眠りにつける。

早く明日の入学式に備えなければ。

「はぁ……」

自然と口からため息がもれた。
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