人でも、鬼でも、「君を愛す」
そもそも、私がこんなことをしているのは、家系に代々伝わる退魔の血を受け継いで生まれてきたからだ。

そのせいで、小さい頃から幽魔を退治するすべを教わり、一人で退治できるようになってからは、夜な夜な幽魔退治を命じられている。

今夜の幽魔は、片側二車線ある大きな国道で交通事故を多発させていた。

被害者はもちろん、死者も出ていた。

幽魔退治をしなければいけないのも解る。

そうしなければ、もっとたくさんの被害が出る。

そうするのが私の役目だとも理解している。

だけど!!

明日は高校の入学式なんだってば!

どうして、そんなときに!!

タイミングってものがあるでしょ、幽魔のバカヤローーーー!!!

新品の制服を着て、華の青春に胸を踊らせて……って、すっごく楽しみにしてたのに!

寝不足で、入学式でも新しい教室でも、まともに過ごせる自信がない……。

「はぁーあー……」

何度もため息をつきながら、外灯が照らしているだけの薄暗い道をトボトボと歩く。

今夜は、厚い雲に隠れて月も星も見えていない。

何となく不安になり、

「私の未来も薄暗いのかなー……」

と、普段はあまり考えないネガティブなことを呟いた。
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