人でも、鬼でも、「君を愛す」
国道から外れ、どんどんどんどん奥へ、狭い道へと入っていく。

住宅街から少し外れると、道の右端に古びた木の塀が連なってきた。

この塀の向こうに、私の家がある。

平安時代に建てられ、リフォームを何度繰り返しても古めかしい見た目の日本家屋だ。

長い木の塀の一番端が来るまで歩き、隠し戸を押した。

ギイィィィィ……

木が軋む音を鳴らし、塀の一部をポッカリと開ける。

人一人通れるほどの隠し入り口を通り、家の敷地内に入った。

再び隠し戸を押し、ただの木の塀に見えるようピッタリと閉める。

立派な造りの本殿や対屋を横目に、敷地の角にぽつんと建つ蔵へと足を向かわせた。

入口扉と、格子状の柵がはめられた窓が一つ上方にあるだけの小さい蔵、それが私の部屋になっている。

本当は対屋を一つ与えられているのだが、広いところよりも狭いところが好きだし、幼い頃に秘密基地として使ってからすっかり馴染んでしまった。

蔵に入ると、電灯も点けずにベッドへダイブした。

「お風呂は……退治に行く前に入ったから、いいや。寝よ……」

そうして、布団を掛けるのも忘れ、何分も経たない内に意識が眠りの底へと落ちていった。
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