恋のクスリ。
【 末廣 蓮 】
パチパチパチ...
鳴り響く拍手の音。
「末廣蓮さん、高校生医学論文コンクール、金賞おめでとうございます!」
額はびっしょりと汗で濡れた司会者がこちらを向いて、満面の笑みでマイクをむけてくる。
「ありがとうございます。」
そう返事をすると素早く豪華な花束が渡された。
「末廣さんは、お父様があの有名な外科医の末廣拓磨さんでいらっしゃるとか、、、?」
「あ、はい。父は都内の大学病院で外科医をしています。僕は父のような素晴らしい優れた医者になることが夢なので、今回このコンクールで金賞を頂けたことを心から嬉しく思っています。」
完璧とも言えるコメントに満足した司会者は「そうですか」と笑顔で返事をすると、また客席に拍手を促した。
ああ、やっと終わった。
今日の末廣蓮はこれにて終了。
ステージから降りる階段に足をかけた時には、もう既に俺の目はうつろになっていたかもしれない。
どうかこんな地獄のような人生から抜け出せるクスリはないだろうか、
もう一度、生まれた瞬間に戻れるクスリはないのだろうか、
気づけば、俺は頭の中でそんなことを考えていた。