恋のクスリ。
【 東城 梨紗 】
「んッ・・・」
気だるく感じるからだをそっと起こすと朝のニュースがいつものように流れていた。
一人が寝るには、広すぎるベッドは妙にへこんでいて
そこを触るとまだほんのりと暖かさがある。
それは、ついさっきまで彼が部屋にいたことを、証明してくれていた。
枕のへこみを私は指でなぞりながら、ベッドを降りた。
テーブルの上には水の入ったペットボトルと10万円が無造作に置かれている。
「、、、、ありがと」
ぼーっとしながら、水を口に含み先ほどから流れているテレビに目を向けた。
「末廣蓮さん!高校生医学論文コンクール金賞おめでとうございます!」
目をキラキラさせ花束を受け取る少年の顔がアップされた。
「幸せそ」
嫉妬のような皮肉のような
そんな言葉を吐き捨てテレビを消す。
そして、自分の左腕に目を落とす。
そこにあるのは、愛の証拠。
愛を求めるクスリの跡。
全てを忘れさせるクスリの跡が
そこにはあった。