恋のクスリ。
「お〜はよっ」
登校中、いつもの聞き慣れた
甘い可愛らしい声で挨拶してきたかと思えば、
ぎゅっと後ろから抱きつかれた。
「….おい。朝からやめろよ」
後ろから回された手を俺は、離した。
「んも〜つめたいな〜。」
むうっと口を尖がらせて、カバンの中からイチゴミルク味の飴を取り出す。
栗色の髪に瞳も茶色に染まっていて
“ 美少年 ”
と言わざるをえない容姿を持つ俺の親友
【 朝日奈 音 】
高校の入学式の頃から女子に毎日欠かさず
「おとく〜んッ」
と黄色い歓声を浴び続けている。
「あ、音ってさクラブとかよく行くんだろ?」
「ん、行くけど…どしたのお?蓮がクラブの話なんて」
元から大きいめをよりいっそう大きくさせ俺の顔を覗き込んでくる音。
「なんかさ、今度ドラッグの講演会みたいなの親父の病院であるらしくてさ、調べてみよっかなって」
「………エエエエエエエっ‼︎」
「んだよ、うるせ…」
最後の言葉を言い終わらないうちに「待って!」と割り込んできた。
「じゃ、じゃあ!クラブでドラッグの密売屋とかに聞き込みしたりするってこと?」
「お、、おう」
「だ、だめだよ!危ないって!!」
手で大きく×マークを作ってなんとしてでも、やめさせようと必死に止める。
「お前って、そういうとこ可愛いよな。
ま、俺なら大丈夫だし。頼めるやつお前くらいしかいないからさ、今日連れて行ってくんない?
ね?おねがい。おと」
「…..ほんと危ないんだよ?」
「うん」
「….ん〜もお。わかったよ..」
「ほんと?」
「連れてくだけ!だからね!」
「ありがと、音。」
フワッとした音の頭を撫でる。
「じゃ、また放課後な」
そう言って、教室に向かおうとすると
「蓮っ」
と呼び止められた。
「これ、忘れ物」
俺の手のひらを広げ
ポンっとなにか小さなものを俺に渡した。
「じゃあ、また後でね」
極上のスマイルで手を振る音。
手を開くとあいつがいつも食べている苺ミルク味の飴があった。