今日も明日もそばにいて
⑤そして…
「実季さん。お風呂に入りたいです」
「あ、そうね。解った、溜めてくるね」
「あ、その前に、俺、ちょっと、コンビニに行って来ます。すぐ戻ります。何か、欲しいモノありますか?」
「うん、スイーツ、お願い。何でも好きだから、迷わず買って来て?」
「ハハ、解りました。では行って来ます」
戻ると先にどうぞと言われた。
「実季さ〜ん。流石に一緒には入らないですよね〜?」
…何いきなり言ってるのよ…。
「当たり前…」
好きって言ったからって…そんなの無理に決まってるじゃない…。要求が早いのよ…。
「解りました。聞いた俺が間違ってました」
「…いつかは…入れるかもね」
冗談なのよ?ぜ〜ったい、入らないから。
「はい、期待しないで待ってます」
ちょっと…そこは、嘘でも、期待して待ってるの方が良くない?…入らないってバレてるのかな。
お風呂上がりの神坂君は当たり前だけど私と同じ匂いがした。…何だか、こんな事一つにドキドキさせられた。
「…実季さん」
「ねえ?」
「あ、はい?」
「もう実季って呼ばないの?」
「生意気かと…」
「さん、って呼ばれると、…年上だって認識してしまう。だから…」
「実季。が、いいですか?」
「…うん。出来れば」
「解りました。じゃあ俺は?」
「え?やっぱり下の名前がいいの?」
「はい」
「…じゃあ…柊一さん?君より良くない?」
柊一さんなんて…恥ずかしくて実際は中々呼べないけどね。
「柊一さんですか…。何だか偉くなった感じです。立場が上みたいな」
「じゃあ、柊一さんで」
「はい。…あの、実季さん…俺、おふざけでも何でも無く、真面目に考えてますから。この先、ずっと一緒にって。あ、まだ早いですか?こんな事言っては。…俺、ただ好きなだけで終わらせるつもりはないんで。
実季さんが良ければですが」
…。
「駄目…」
「え゙ーっ?」
…。
…駄目って…マジですか…。えー…。じゃあどうしたら…。良くて恋愛止まりって事ですか…。俺とはずっと一緒は考えられないって…。
「また実季さんて、さんになってた」
あ、…。…はぁ。そこ?今、そこですか?……はぁ。
「…実季…。一緒に居たいと思っています、ずっと」
「うん…でもごめんね。即答は出来ない。私は年上で、しかもそんなに若くも無い。色々あるから…。まだ話さないといけない大事な事、あると思うから」
ずっと一緒に…今は、言える。気持ちを交わせたばかりだから。気持ちは濃い。でも…先のこととなると…。
「はい。解っています。まずは俺の気持ち、真剣だって解って欲しかったから」
「うん、…有難う…」
「実季?信じてください。そうじゃ無いと…、俺…今夜、実季を抱けないから…。駄目ですか?やっぱり逸りすぎですか?」
あ。…うっ、苦しい…胸が…神坂君が私にこんな…面と向かって恥ずかしそうに求める言葉を言うなんて……。甘くて、ドキドキ胸が高鳴るんですけど。
部屋に寄るように言ったのは私。何でもない話をしたいと言って……実は解らないこと、確かめたかったのは私。
お風呂上がりでソファーの前に座っていた二人の距離は少しずつ縮まっていた。