俺の手が届く範囲にいろ。


「前からずっと行きたいって
言ってただろ?水族館」


「う、うん。言ってたけど……」


「…ペンギンショーもやってるらしいし」


「…ペ、ペンギンショー?
わたし、ずっと見たかったんだ!
京ちゃん、覚えててくれたの?」


「…まぁ、あんだけ言われればな。」


「それにね!最近アザラシの赤ちゃんも
生まれたんだよ!」


「あー、名前も決まったんだっけ?」


「うん!マスちゃんって言うの!
行きたいっ!マスちゃんに会いに行こう?」


そう言って、わたしはバッと立ち上がると
京ちゃんは満足そうにふっと笑った。


「……やっぱ泣き顔なんてらしくねーよ」


「ん?」


「…なんでもない」


「急いで朝ごはん作ってくるね!」


そう言って、わたしは部屋を出た。


……失恋した次の日にだって
いつも通りに笑えるのは
全部、京ちゃんのおかげなんだ……__


……京ちゃんってすごいな。


わたしは、そんなことを思った……__

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