鬼と仮面
「同期って言っても自分より仕事のできる矢敷さんにタメ口は遣えないんですが」
「今はプライベートなので外して」
「わかりました」
見られた。いやこれから敬語を外そうと思ってたんですよ。
「仕事できるって、灰澤さんもうちでは完璧だって有名だけど」
運ばれたコーヒーに口を付ける。私は砂糖とミルクを入れてマドラーで混ぜた。
「経理の鬼の矢敷さんには遠く及ばず」
「みんなに灰澤さんを見習えと言ってやりたい」
「矢敷さんファンクラブに殺されるので止めていただきたい」
嘘みたいな話だけれど本当に矢敷さんファンクラブというものがある。