鬼と仮面

その顔は思ったよりもあどけない。

「本当似てる」

「そこで笑ってるの。ツボが謎すぎる」

「よく言われる」

少し冷めたコーヒーを飲む。もう四時を過ぎていた。
欠伸を噛みしめる。カフェインを入れても眠気には勝てない。

「矢敷さんは学生時代からモテてそう」

足が速いとか頭が良いとか格好良いとかで。

きょとんとした顔をされた。

「やっぱり覚えてないよな。灰澤さんと俺、同じ中学だった」

へ、と思った。
完璧主義者のとき以上に。

「一年のとき、同じクラスだったし」

知らなかった。本当だ。
私は中学二年の頭に転校した。


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