鬼と仮面

改札まで来て立ち止まる。矢敷さんも立ち止まって、通行人の邪魔となった。

「私……その、」

腕を引っ張られた。後ろを人が通る気配がして少し驚く。

「本当は気なんて遣ってない。俺が灰澤さんと一緒にいたいから残った」

「え……」

「一人でも大丈夫なんて、俺はもう灰澤さんの口から聞きたくないよ」

じゃあ、と前頭部をとんとんと叩かれた。

矢敷さんはこちらに背を向けて行ってしまう。

どきどきした。
夢だったら良いのに、と同時に思った。

でも、これが夢で、キーウィが手元にないのは寂しいと思った。



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