鬼と仮面
とか思ったけど、ファミレスの会話を聞く限り、思い出せないというより覚えてないんだろう。
「灰澤さんいます?」
資材部の入口近くにデスクを構える男性に声をかける。
「灰澤ー、経理の矢敷さん」
既に面が割れている。ここには足繁く通っているからだ。
どちらの名前でざわついているのか分からないが、たぶんどちらもだと思う。
「お前もついに矢敷に怒られる日が来たのか」
「先輩は注意されない日を早く作ってくださいね」
そんな会話が聞こえて、灰澤さんが現れる。
俺の姿を見て、少し顔を強張らせた。
「何か出し忘れとかですか?」
奥にかけてあるカレンダーを確認する。