鬼と仮面
「違います。今日何時退社ですか」
「六時には、切り上げようかと」
「何か用事でもあるんですか」
「ご飯を食べに行こうかななんて」
「誰かと約束ですか」
「……一人です」
それなら、と言葉を続けようとした。
その前に灰澤さんが俺の背中を押して資材部から出す。廊下は静かだった。
「俺もついて行って良いですか?」
「そ、そんなの普通にメッセージで送ってください。わざわざここに来なくて良いですよ」
「送っても返事がないので」
はっと何かに気付き、灰澤さんはジャケットのポケットを叩く。
それから資材部に戻っていった。