鬼と仮面
そう返すと、口を噤んだ灰澤さんは困ったように地面に視線を泳がしている。
この仕草を知っている。
でも、灰澤さんはきっとそれを認めないし口に出さない。
「……わかりました、六時半ですね」
観念するみたいに言って、その約束は決まった。
廊下を歩いてエレベーターに乗る。閉まる寸前に滑り込んできたのは灰澤さんだった。
「どうしたんですか」
「下までちょっと、飲み物買いに行こうかなと。……資材部のみんなからの視線が痛いので」
「なるほど」
乱れた息を落ち着かせるように壁に肩を寄りかける。