鬼と仮面

薄い肩はあれから変わらないな。

ドアを閉めてから一階のボタンを押す。
それに気付いた灰澤さんがこちらを見た。

「経理上ですよね?」

「俺も寄り道して帰ります」

本当はあのときの俺も、その薄い肩を抱いてやりたいと、思ったのだろう。

中学一年の二学期の最初、クラスでは騒がしい方の古倉が灰澤さんに告白したという噂がたった。

そのとき男子の罰ゲームで女子に告白するというのが流行っていた。

そんなはた迷惑な罰ゲームがあるかと思うけれど、中学生男子っていうのはアホみたいな生き物で、恋愛だのキスだの巨乳だのって、興味だけは余るほどあった。


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