鬼と仮面

その犠牲者が灰澤さんだった。

古倉を好きだった高笠が灰澤さんをいじめはじめた。
そこからは泥沼のようで。

二学期が終わるころにはいじめは自然消滅していて、担任の先生はほっとしたように、何事もなかったかのような顔をして過ごした。

クラスメートも同じだ。

俺は心のどこかで灰澤さんが自然消滅するんじゃないかと思った。

でも三学期、灰澤さんは学校に来た。
教室に来ることは殆どなくて、保健室にいるのをよく見かけた。

春先の頃はよく女子と話していて笑う子だと思っていた。見かけるたびに笑顔は消えていって、その目に映っているのは廊下のタイルだけ。


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