鬼と仮面

灰澤さんの他に会社の同僚はいなかった。

「どうしました?」

後ろを見て訝しげな顔をする。

「一人で来たんだなと」

「考えてみれば、矢敷さんと親しくないひとを連れていっても矢敷さんが気を遣うだけだなあと思ってやめました」

「とても賢明な判断だと思います。どこに食べに行くんですか?」

彼女が定期を出したので自分も定期を出す。

「あ、決めてなかった」

「じゃあ今決めよう。ラーメンか和食」

考える顔してから、こちらを見る。

「どうしてその二択なんですか?」

「俺の好物だからです」

それを聞いて、ははと笑う灰澤さん。


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