鬼と仮面

ファミレスにいたとき、中学の話題を出すつもりはなかった。

忘れたいことだと思ったし、懐かしい話をしたいとも思わない。

「良いですよ、そんな風に笑わなくて」

改札を通る。灰澤さんは首を傾げた。

「あれからずっと笑ってるけど、そんな風にしなくて良いから。困ってるなら困った顔して」

「そんなつもりは……」

「俺は経理に配属されて資材部の穴が多すぎる明細を見ながら、灰澤さんの完璧主義の仮面剥いでやるって思ってたから」

ええ、と眉を顰める。
半分嘘のような、半分本当だ。


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