鬼と仮面
他の女性社員は何かと絡んでくるのに、全く接点を持たない灰澤さんにどう近づこうかと考えていた。
遠くから笑っているのを見るだけで良いとか思っていたのに、だ。
「ちなみに俺の嫌いなものは鰻」
「どうして?」
「生きてる姿がダメで。ドジョウとかも」
近づいてしまった今となっては、そんなの関係ないけれど。
友達から始めると宣言しているし、すぐにどうこうなるとは思っていない。
「矢敷さん」
肘の袖を引っ張られる。何か、と振り向く。
「和食が食べたい」
あ、きゅんとした。
片手で顔を覆う。今にやけた、まずい。