鬼と仮面

「友達からで良いって」

「本当です、覚えてなかったの本当なんです。それに、さっき笑わなくて良いって言われて、本当は怖かったんです」

人通りの少ない道で立ち止まる。
灰澤さんは何かを守るみたいに鞄の取っ手を握りしめていた。

「ずっと笑い方変でしたか? 私、おかしいですか? 覚えてないの、矢敷さん怒ってるんですか?」

静かに言葉が吐かれる。それは叫びと同じに聞こえた。

「あのとき、矢敷さんが好きだって言ってくれた日からずっと、それが嘘だったら良いのにって思う自分がいるんです。夢だったら良いのに、罰ゲームだったら良いのにって」


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