鬼と仮面
だから全部ください、と続けるのはまだ重いと判断した。
やっと大事にしてくれるというのだから、灰澤さんのやり方で大事にしてくれれば良い。
「返信してくれるなら社内で話しかけたりしませんし、盾に俺の名前を使っても結構です」
「そんなこと、しないですよ」
「代わりに、一人でも大丈夫なんて言わないでください」
中学の自分はその言葉に大きなショックを受けた。
何気にトラウマなのかもな、と思う。
そして、今灰澤さんの上手に保っていた天秤をぐらぐらと揺らしているのが自分だという自覚もある。