鬼と仮面
「ああ目玉が」
「目玉が壊れたのは半分灰澤さんの言葉の所為ですから」
「人の所為にするのはどうかと思います」
火の通った玉ねぎの元にお湯を注ぐ。顆粒コンソメを入れて、大きくかき混ぜた。
「なります」
灰澤が顔を上げる。
矢敷と目が合った。
「今、灰澤さんの考えてること当てますね」
「はい?」
「キスしたい」
「え、ちがいますよ」
「残念です」
火が消される。それに気を取られて、近づいた顔に気付かなかった。
「俺はキスしたかったので」
矢敷が笑った。
end.