鬼と仮面
番外編 柚子は九年の花盛り
桃栗三年柿八年、柚子は九年の花盛り。
エレベーターを降りると、外気と混じった正面ロビーの空気は冷たく感じた。秋も深まって、というよりもう冬だ。
受付から「お疲れ様です」とかかった声に鸚鵡返しする。
俺の頭の中は、今日の夕飯で頭が一杯だった。
正面玄関から出たすぐのところで、こちらを見ている男と目が合った。あ、と声を漏らす。
「矢敷?」
「鹿沼」
「そう! うわ、成人式以来?」
「うん。そうなる」
中学のときの旧友。同じ部活で、一番仲の良かった男子。
成人式以降の集まりに俺が顔を出していないので、本当に久しぶりだ。