鬼と仮面
鹿沼も仕事帰りなのだろう。スーツ姿で鞄を持っていた。
「にしてもお前……大手だな」
「鹿沼は? 近く?」
「そうそう。すぐそこの商社」
俺の後ろにある本社を見上げて気難しそうな顔をする。
そんなに給料変わらないと思うけど、とか言ったら嫌味に取られそうなので止めておく。
「見た顔だなと思って凝視したら矢敷だった」
「結構不審者じみてた」
「マジで!?」
「嘘」
こういうやりとり、懐かしいなと思う。笑っていた鹿沼が「あ!」と顔を上げる。
「今度中学の集まりあんだよ。矢敷も来いよ」