鬼と仮面
その通りだが、言われて強く否定できなかった自分が悪い。
久しぶりに会った旧友の頼みを無碍にはできなかった、と言えば聞こえは良いが。
元来、あまり断ったり否定したりするのが面倒な質なのだろう。
前も受付の女性との噂を否定していないでいたら、灰澤さんまでそれを信用していたことがあった。
「灰澤さんは来なくて良いですよ。俺が行って、てきとーに濁してきます」
「それは、申し訳ないです」
「学年の同窓会らしいですよ。どうせ来るのなんて三十いるかいないかでしょうけど、会いたくない人、いるんじゃないですか?」
言い方が良くなかった。灰澤さんが黙る。
そして、フォークが置かれた。