鬼と仮面
『灰澤と先に行ってるから、ゆっくり来いよ!』
この間連絡先を交換した鹿沼から。その文章に口が自然と開いた。
「は?」
「先輩、どうしました?」
またミスが見つかったのか、と後輩が不安そうな顔をしてこちらを見てくる。
そんな心情に構っている余裕はない。
「おい、10分で直せ」
隣のデスクにいた同僚が、驚いた顔でこちらを振り向いた。
とは言ったものの、修正を他の人間にも分担したが、終わったのは30分も過ぎた頃だった。
頻りに謝る後輩に、こっちが悪かったと謝って、早々に会社を出た。
寒い。やっぱり、もう冬だ。