鬼と仮面
そんなことを考えている内に、会場の前に到着した。と言っても小さな居酒屋を貸し切りにしているらしい。
鹿沼くんが引き戸を開ける。
私は、大丈夫だ。もう中学のときの私じゃない。
逃げるのではなくて、向き合いたい。
「あ、矢敷来た! こっちこっち!」
矢敷さんが現れてすぐにみんなの視線がそちらへ向かった。
成人式のときもこんな感じだったのだろうか、と思いながらそれを見ていた。
矢敷さんは鹿沼くんや数人に短く挨拶をして、呼ばれた方に座ることはせずに会場をぐるりと一周見た。
目が合う。