鬼と仮面
咄嗟に逸らしたのは、どうしてだろう。みんなと仲の良い矢敷さんを見たくなかったのか、私の心の弱さか、それともこっちに来ないで欲しいという気持ちの表れだったのか。
全部だ。
私の気持ちなんて知りもせずに、矢敷さんは私の方へ歩いてきた。
「でさ、灰澤は今一人暮らし?」
「え、あ、うん……」
「古倉、詰めて」
私が店に入ってすぐに、隣に座ってきた男性。灰澤、元気だった? と慣れ親しんだように名前を呼ばれたけれど、全然分からなかった。
他のテーブルに座る女性の姿もちらちら見ていたけれど、全然知らない子ばかり。