鬼と仮面
矢敷さんがいて、安心している自分がいる。
大丈夫だと思っていた。私は大丈夫。
何が、大丈夫だったのだろう。
「手、冷たいです」
そして少し湿っている。緊張していたからだ。
おしぼりを持って拭おうとしたけれど、ぎゅっと握られてしまう。
「……矢敷さん、意地が悪いです」
「よく言われます」
ちょっと嬉しそうなので、どうしたものかと考える。
「矢敷、生ひとつ。乾杯」
鹿沼くんがジョッキを持って、矢敷さんと乾杯をする。それを見ていると、私にふと視線が向けられた。
「お前ら付き合ってんの?」
ぽつりと投げられた疑問。