鬼と仮面
鞄を持って立ち上がる。矢敷さんも起きたことだし、もうここを離れても文句を言うひともいない。
七時までカラオケボックスにいても大丈夫らしいけれど、煙草の匂いがきついので外のファーストフード店で時間を潰していた方が良い。
「どこ行くんですか」
がし、と鞄を掴まれた。え、結構力強いですね。
「出ようと……」
「俺も行きます」
スーツのジャケットと鞄を持つ矢敷さんを待つ。
一緒にカラオケを出たは良いものの、私も矢敷さんも終電がない。
「矢敷さん、タクシーで帰るんですか?」
アルコールが抜けていないのか、黙ったまま歩く矢敷さんに声をかける。