鬼と仮面
矢敷さんは空いている方の手を額に当てて黙ってしまった。しばらくすると、直った。
「ずるいです」
「え」
「それは必殺技か何かですか?」
「矢敷さん、酔ってます?」
結局矢敷さんは他のテーブルに呼ばれてもずっと私の隣にいて、手を握ってくれていた。
おかげさまで私の手も人並みに暖かくなった。
居酒屋を出て、二次会に行くかどうかの話になっていた。
「ところで灰澤さん、”その他”の処理はどうするか決めましたか?」
前に私のごちゃごちゃとした気持ちを整理するときに、”矢敷さんを好きな気持ち”と”その他”に分けて、私は今どちらも持っている状況だ。