鬼と仮面
帰るなら途中で下してくれないかな、なんて安易に思ったけれど、相手は経理の鬼だ。
そんなことを許してくれるはずがない。
というより、この話題もなく接点もなく気まずい状態が長く続くのは心臓に毒なので、出来ればタクシーを捕まえて早く帰ってもらいたい。
「……金がないです」
……そういえば私たち数合わせ者どうしでしたね。
「私はどっかで時間潰そうと思うんですけど、矢敷さんもどうで」
すか、という前に思い返した。
「はい」
誘ってしまった。
まさか取り消しにできるわけもなく、矢敷さんと歓楽街を抜けて駅の方へ歩いた。