鬼と仮面
先日までは熱帯夜が続いていたけれど、今日はそんなに暑くない。
といっても、午前二時手前のことだ。
もうすぐ秋だなあ、なんて現実から逃避していると、隣で矢敷さんが立ち止まった。
がやがやと煩いゲーセン。知っているひとでも見つけたのか、と私も視線の先を探る。
何も言わずすたすたとクレーンゲームの方へ行ってしまう。
ケースの中にいるのはキーウィ。確かニュージーランドに生息する鳥だ。
「これ、灰澤さんに似てません?」
「え、そうなんですか?」
主に丸いと言われているのか、遠回しな嫌味か。
ケースの向こうの壁にキーウィについての説明が書いてある。