セロリとアライグマ
6月のある雨の日
「では今日の納品は…これで全部になります」


ある市立中学校のある一室。

オレは白い業務用ワゴン車で運んできたダンボールの山の最後を広い教室の隅に置く。

ふぅーと息を吐き、額から流れる汗をYシャツの袖でぬぐった。



外は雨がかなり降っていて、白いYシャツには雨のシミがぽたぽたとついている。

教室の窓際にいるメガネをかけたオッサン、というかこの学校の事務長は、そのダンボールの数を数えながらオレの方を振り返った。

「スミマセンでしたね、こんな雨の日に。設定は明日からですか?」

「ちょっと待ってください…明日もちょっと予定入っておりまして、設定は来週入ってからになっちゃいますね」

「なるべく早めにお願いできます?二学期あたまからパソコン授業スタートさせたいんですよ。PTAからも強い要望が来てまして」


だからぁ、来週設定に来るって言ってるだろ。

この学校は来週から夏休み始まるのかよ。夏休みなんてあと1ヶ月先なのに。

ホント客というものは色々ぐだぐだとやかましいものだ。



とは心の中で思ってはいても、


「あ、はい!来週中には全て設定終わらせますので」


といいながらにっこり笑ってしまうサラリーマンなオレがかなり悲しい。

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