セロリとアライグマ
トイレの窓の中の人物に目を留めた。


新伊だった。


新伊は、じっと下を見つめ、なにやら険しい顔をしていた。

何をしてるんだと思い、オレは女子トイレという事を忘れてドアの窓を覗き込んだ。

手を洗っていた。

水を流しっぱなしで手をずっと洗っているのだ。


手についたインクかなにかを洗っていると思った。でもなんだか違うようだし。
いくら3月とはいえ、真冬の水はとても冷たいはずだった。

だが、新伊は唇を噛み、泣きそうな顔でずっと手を洗っている。

オレは新伊の行動がイマイチ分からないまま更衣室に行ってジャージを取り、教室に帰った。



しばらくしてチャイムが鳴る前に新伊は手をハンカチで拭きながら教室に入ってきた。

クラスの中心的存在の女子グループ、今井と兼古、伊藤、高西、安西は新伊を見てにやっと笑った。

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