セロリとアライグマ
しばらく、静かだった。

静かな中、新伊はボロボロと涙をこぼしていた。

今まで流す事の出来なかった涙をこぼしていた。


何度も何度も手を洗って苦しんだときも、美化委員に推薦されたときも、今井達にゴミ拾いやらされたりカバンにコーヒーかけられた時も、精神異常だと言われた時も、ずっとずっとずっと我慢していた涙をこぼしていた。


オレはそれをじっと見ていた。



「…ホントは…最後まで通いたかった…でも、でも体が言う事きいてくれない。どうがんばっても『汚れている』ように見えて仕方がない…諦めたくなかった。私、自分を諦めたくなかった…」


悔しそうに泣く新伊。

初めて聞いた新伊の本当の気持ち。

この涙を見て、クラスの奴らはどう思うんだろう。

これでもまだ『気持ち悪い』『異常だ』と思うんだろうか。



ただちょっと回りに流されることの出来なかった女の子。。

流される事を拒み、必死に耐えた普通の女子高生なんだ。



図書室のドアの窓から日が差し込んだ。

夕方の斜めの日。新伊の影がホワイトボードまで伸びている。



涙をこらえようと必死にしゃっくりを止める新伊の影。

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