セロリとアライグマ
「新伊さーん、また手、洗ってんの?」

「よっく洗うよねぇ」

くすくすと5人は笑う。

つい何ヶ月か前まで友達だったはずだ。

しかもつい何ヶ月か前まで『ひさちゃん』と呼んでいたはずだ。

それが今は苗字に「さん」付け。他人になったという証拠だろうか。


よくもまぁそんな事いえるなとオレは顔をしかめた。

佐野はぼそっと「女ってこえぇな」とつぶやく。



「ねぇねぇ、新伊さんって…下の名前、『久麻(ひさま)』でしょ?『クマ』って読めない?」

「あーそういえばそうだねー」

高西と伊藤は目を合わせ、ぱちんっと手を叩いた。


「あ、分かった!『アライグマ』!!」


伊藤の一声で、5人はゲラゲラ笑い出した。オレには全く笑えなかった。

「そーだ!異様に手洗うし、アライグマ!!」

「サト、センスあるじゃん」

高西と今井は腹を抱えて笑いながら新伊を横目で見ている。

新伊は一生懸命無視しようとしているが、目は涙がたまっていた。
それが流れないようぐっとこらえていた。


ああ、これが原因でシカトされるようになったのかと、オレは横目で新伊を見た。
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