セロリとアライグマ
職員室のドアをノックし、田崎を見つけるとオレはぺこっと礼をして中へ入っていった。

田崎は学年主任の教師と何か話をしているようだった。オレが来ている事に気づいていないようだ。

「田崎先生、先生のクラスの新伊…でしたっけ?転校したんですか?」

「あ、はい。やはりクラスになじめなかったようで…このまま学校にいてもクラスで浮いてしまうので、僕からも転校を進めたんですよ」

「まぁ…どこのクラスにもいますからねぇ、少し変わった子。40人もいれば色んな子がいますし」

「ええ。なぜ手を洗うのか僕には理解出来ませんでした。それが原因でクラスの女子から嫌がらせされたりしたようです。ボクも24時間クラスを見ているわけではありませんから、どうしてそうなったか分からないんですが…」



ムカついた。

ものすごくムカついた。


『クラスになじめなかった』

『このまま学校にいてもクラスで浮く』

『手を洗うのが理解できない』

『24時間クラスを見ているわけではないから理由が分からない』


なんだその発言。

なんだその投げやりな言葉は。



新伊がどんなにがんばっていたか知らないくせに。
知ろうとしなかったくせに。

新伊がどんなに苦しんでいたか知らないくせに。
知ろうとしなかったくせに。


新伊がどんなに悔しそうな涙を流していたか知らないくせに。



新伊がどんな笑顔を見せていたか忘れているくせに。

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