セロリとアライグマ
そこには信じられない光景があった。

先ほどオレの思い出の中で苦しそうな顔で手を洗っていた新伊が、スーツを着てイスに座っていて、男子中学生と楽しそうに会話をしていた。

新伊は顔がシャープになり大人っぽくなっていたものの、笑った顔とかは11年経った今も全然変わっていない。

髪は少し茶色で肩くらい。

高校の時と変わらず小柄でかわいらしい。


オレは廊下で口を開いたまま固まっていた。



すると、また後ろから女子生徒が三人ぐらいでどこからか現れ、カウンセラー室の扉を開けた。

「新伊せんせー。土曜日ねー、女バス、練習試合なんだよー。見に来てくれるー?」

『へぇー見に行ってもいいの?美奈ちゃん達の部活、見てみたいなー』

「うん、来て来てー!!私、レギュラーになったんだよー!!センターなの」

「すごーい!!っていうか『センター』って何…?」

「もー先生ってば!!センターってね―……」

今度は女子生徒と楽しそうに話している。
先ほどまで静かだったこの辺りが一気ににぎやかになった。



見間違いじゃない。

あれ、新伊だ。


新伊、教師になったのか?




「あ、いたいた、山崎さん」

オレは自分の名を呼ばれて振り向いた。

そこには先ほどの事務主任が立っている。

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