セロリとアライグマ
「山崎くん」

オレはゴミ拾いをサボろうと思い、授業が終わった後、教科書をカバンに入れて帰る準備をしていた。すると、横の席の新伊が話しかけてきた。

「なんだよ」

じろりと新伊を睨む。新伊が悪いわけではないが、なんとなく。

「……なんでもない。ごめんね、呼び止めて」

新伊は申し訳なさそうに少し笑ってその場を離れ、掃除道具箱からゴミ袋と火バサミ、軍手を持ってゴミ拾いの準備を始めた。

オレがサボるのを止めない。

どうして止めないのか、オレにはよくわからない。


「アライグマ、今日はゴミ拾いなワケ?」

くすくすと廊下側の一番前の席で今井と高西が笑って新伊を指差す。

別に馬鹿にすることじゃないだろう。
委員で決めた事なんだから。

新伊は2人を無視。軍手を手にはめている。

「軍手してたら手、洗えないじゃん」

「アライグマなのにねぇ~」

「アライグマ~、ほら、こっちにゴミ落ちてるけど。美化委員なんだから拾ってくれない?」

今井は自分のプリクラが張ってあったクリーム色の台紙を手帳から取り出し、ぐちゃぐちゃと丸めてぽいと床に捨てた。

高西はそれを見てゲラゲラ笑っている。



なんとまぁ幼稚な行動だろうか。

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