セロリとアライグマ
新伊ははぁとため息をつき、今井の近くまで行ってゴミを拾おうとしゃがんだ。

その瞬間だった。



「―っっ…」


床に落ちている丸まったシール台紙を触った新伊の手は、窓際にいるオレから見てわかるくらい震えていた。


「?何やってんの?」

高西は顔をしかめて新伊の顔をのぞく。

新伊の顔は真っ青になり、手はずっと震えたままだった。

そして、バッと立ち上がり、急いで軍手を脱ぎ、その場にゴミ袋を投げ捨てて逃げるように教室を出て行った。



「ちょっとぉ…何なの?あれ?!超ムカツク~」

「カンジ悪くない?人の投げたゴミ触って逃げ出すなんて。潔癖症って、ゴミ触るだけでダメなわけぇ?」

今井と高西は新伊の出て行ったドアを睨みつけ、ガンッと机を蹴る。醜い。


いや、そんなことよりも新伊。
アイツ、何か変。


あれ、ホントにただの潔癖症か?



「セロリ、同じ美化委員なんだから何とかしてくんない?アライグマ」

今井は窓際に突っ立っているオレに向かってキレ気味な感じで話しかける。

オレはそれを無視し、床に投げ捨てられた軍手とゴミ袋と火バサミを持って教室を出た。



新伊はもうどこにもいない。
おそらく、体育館廊下の女子トイレだ。


オレは体育館の方へ向かって走り出した。




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