セロリとアライグマ
ダンボールとビニールばかり触っていたら、だんだん手が汚くなってきた。

一旦休憩して手でも洗ってくるかと思い、教室を出て水飲み場に向かった。



水飲み場で水道の蛇口をひねり、石鹸を手の中でこすった瞬間、オレの動きが止まった。
というか、動けなくなった。


なぜか分からない。

ふと、『何か』を感じた。それからゆっくり視線を右に向けた。



オレの横で、学校の制服を着た女の子が手をゴシゴシ洗っている。

この中学の制服ではない。


でも、おれはその子を知っている。




落ちない汚れを一生懸命ゴシゴシと洗い、流そうとする。


険しい表情で。

今にも泣き出しそうな目で。




「…新伊…?」


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