セロリとアライグマ
「洗ったら、なんか良くなるワケ?」

「うん。気持ちが少しスッキリする。でもまた汚れてると思い始めたら苦しい。変なんだよね、ワタシ」


同意はできなかった。

「変」とはいえなかった。

言っちゃいけない気がした。


「こんなんじゃ嫌われちゃうの当たり前だね、やっぱ」

笑いながらそういう新伊に『なら、やめればいいのに』と言ってしまいそうだった。

だが、あんな苦しそうに手を洗う新伊を見えると、とてもじゃないがそんなことはいえなかった。



「1年の時は今井とかと仲良かったじゃん」

オレはゴミを拾いながら小さく言う。

「…それよりごめんね、山崎くん。なんか巻き込んでゴミ拾いやらせちゃって」

「いいよ、別に。ていうかお前が謝ることじゃないじゃん。美化委員で決めたんだし」

「そっか。でもありがとう」

新伊はにこっと笑った。

教室では決して見ることの無い笑顔だった。



こうやってると、全然普通である。クラス内でシカトされている女子とは思えない。

新伊は、いちいち「ごめん」と「ありがとう」を忘れない。彼女は謝罪と感謝を知っている。



こんな新伊が嫌われているなんてなんだか変な話だ。

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