セロリとアライグマ
「ってゆーかセロリ、お前、オレがこないだ紹介したI高の女、そっこーでフッてたじゃん」

「別に彼女いらねー。うぜぇもん、なんか時間縛られるみたいで」

「んなことないぞー。彼女、いいぞー。っと…」

佐野は自分の背後の影に気づき、立ち上がって席をあけた。新伊が来たのだ。

「ごめんね、佐野くん」

「…」

佐野は何も答えず、新伊の席から移動してオレの前の席に座った。

佐野もクラスの女達と同じように新伊をシカトする。

これで仲良くしゃべったら、みんなに仲がいいと思われてしまう。だから皆新伊と話をしない。


このクラスの人間は、皆そういう人間だ。

流されている。

人を嫌い、文句をいい、ウザがり、それで会話が成り立ち、友情が深まるのだ。



オレはふぅと息を吐いた。すると、新伊と目があってしまった。

新伊はにこっと笑った。

「おはよ、山崎くん」

「…はよ」

オレはぼそっと小さな声で答える。
別に無視する理由はオレにはないのだから。

そんなオレを見て佐野は驚き、小声で話しかけてきた。

「お前、アライグマと仲良しなわけ?」

「挨拶されたから返しただっつーの。お前、馬鹿じゃないの?」

オレは佐野を睨んだ。

オレの横では新伊ががたんと立ち上がり、教室から出て行った。
手を洗いに行ったのだろう。


それを見ていつもの女子5人組はにやにやと笑っていた。

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