セロリとアライグマ
「あれ?山崎くん、まだ帰ってなかったんだ」

ガラガラと教室のドアを開ける音がした。新伊だ。

オレはバッと新伊の方を見た。

「新伊…」

「委員会、すぐ終わったの。今日はプリント配るだけだったよ―」

新伊はプリントを持ってオレの方に歩いてきた。

そしてすぐに自分のカバンの色の変化に気づいた。


辺りはコーヒーのにおいが充満している。


「……」

新伊はカバンを見つめて、それからはぁとためいきをついた。

犯人は分かっているようだ。

「悪い。突然で止めれなくて」

その顔を見て、オレは思わず謝ってしまった。
別にオレは悪くないのに。

新伊はブンブンと首を横に振った。

「平気。前にもやられたことあるから。洗えばおちるだろうし…」

細い声で話しながら新伊はカバンを触った。

その途端、ビクッと新伊の体は硬直し、そのまま動かなかった。


「?どうした?」


オレの声も聞こえないようだった。

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