セロリとアライグマ
別に悩まなくてもいいか。

本人に聞いたほうがすっきりしそうだ。


「それって、ただの潔癖症?汚いのが嫌いなだけ?」

「……」

新伊はうつむいた。

何も答えなかった。

いや、新伊はきっとわからないんだ。
なぜ自分が手を洗ってしまうのかを。


一分ぐらい沈黙があっただろうか。

新伊が口を開いた。

「なぜかは分からないの。ただ、長い時間手を洗わないでいると、すごく不安になるし、自分が汚れてしまう気がして怖くなる。分かってるの、こんなに手を洗うのは異常だっていうことも。変だもん、ワタシ。でも…洗わないと苦しいし。だから洗っちゃう」

「……」


分かっている。

彼女は、こんなに手を洗うことはおかしいということを分かっている。

でも止められない。



何なんだろうか。


新伊は、何を洗っている?


新伊はコーヒー色に染まったカバンから、自分の教科書などをとりだした。
教科書も少し染みている。
布地のカバンはコーヒーの染みだらけ。
しかも斑模様ででかなり汚い。



すごい。ドラマのいじめみたいだな、これ。

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