セロリとアライグマ
「ちょっと洗ってくるね、これ」

「ああ。オレ、帰ってるから。お前も気をつけて帰れよ」

「うん、ありがとう」

新伊は無理して笑顔をつくり、オレに手を振った。

そしてカバンを持って走って教室から出て行った。


色々分からない事だらけだが、とりあえずバイトに間に合わなくなってしまうので、急いで帰り支度をして教室を出た。


下駄箱から靴を出した時点で、ふと後ろを振り返った。

玄関からまっすぐ続く廊下は体育館につながっている。

その廊下に新伊がいつも手を洗うトイレがある。

 


新伊、大丈夫だろうか。




このままだとバイト中も気になるだろうから、オレは玄関に背を向け、体育館に向かって歩き始めた。

静かな廊下にオレの足音が響く。



体育館へ続く廊下にある女子トイレの前には、コーヒー色に染まった新伊のカバンが落ちていた。

まだ洗っていないのかと思い、オレはチラッと女子トイレのドアを覗いた。


すると、洗面台の前に立っている新伊が見えた。

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