セロリとアライグマ
「ちょっと、雅由、開けるわよ」

コンコンと自分の部屋をノックされて、オレはドアの方を見た。

自分の部屋で机にむかってはいたが、ゼミの宿題には手をつけていない。
昨日発売された雑誌をパラパラ読んでいた。


「何?ねーちゃん」

ドアの向こうにはオレの姉、実羽(みう)がいた。

姉は短大二年生。
オレと三つ違い。

今はオレと同じく夏休み中で、近所のファミレスでバイトをしている。

オレの友達を家に連れてくると、姉を見て「すげー美人じゃん」と目を輝かせて言うが、性格はサイアク。

何かオレが気に食わない事をしたものなら口より先に手が飛んでくる。

オレは姉にケンカで勝ったことは一度も無い。



「私、これからバイトだから。あんた、ゼミは?」

「今日はお盆で休み」

「あっそ。ていうか…休みだったら部屋の掃除すれば?あり得ないぐらい汚い」

姉はオレの部屋を見渡して顔をしかめた。


ドアの近くには先ほどまで履いていた靴下が転がり、いたるところにマンガが無造作に転がっている。
そしてベッドの上は洗濯物だらけ。

「なぁに、コレ。蛆でもわいてんじゃないの?きったない」

「うっせーよ。さっさとバイト行けよ」

オレはしっしっと姉を手で祓った。


すると、その行為にカチンと来たのか、姉はズカズカとオレの部屋に入ってきて、椅子に座ってマンガを読むオレにドカッと蹴りを入れる。

非常に痛い。

姉のケリはアンディ・フグ並みだと思う。

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